外反母趾は、中高年以上の女性の足によくみられる症状です。足の親指が内側へ変形し、痛みを伴うことも多く、悩まれている方も多いのではないでしょうか。そこで、今回は外反母趾を自宅で治す方法についてお伝えします。
外反母趾とは
外反母趾とは、母趾(足の親指)のつけ根が飛び出し、その先が小指側に曲がってしまった状態のことを言います。医学的には、母趾がMTP関節(指の付け根の関節)で小指側に曲がり、HV角(曲がった角度)が20度以上になると外反母趾と診断されます。
HV角が20度~30度は軽度、30度~40度が中等度、40度以上が重度に分類されます。 圧倒的に中高年の女性に多いとされています。放置していても変形が進行することはありますが、自然に改善することはありません。変形が進行すると、母趾の外側が靴に当たって炎症を起こし、疼痛が出現します。疼痛がなくてもHV角が20度以上ある場合は外反母趾と診断されます。
外反母趾の原因
生まれつきの足の形(遺伝も大きく影響します)と生活習慣(特に正しくない歩き方)が組み合わさって一定の条件を満たした場合、外反母趾が発症するとされています。
母趾より示趾(足の人差し指)の方が長い足の形をギリシャ型、母趾の方が長い形をエジプト型、同じ長さの形をスクエア型(正方形型)といい、日本人の場合はそれぞれ25%、70%、5%の比率と言われています。
最多を占めるエジプト型(母趾が一番長い)は、体重がかかったときに足全体の均衡を保とうとして母趾のつけ根にねじれた力がかかりやすく、その力を逃すために関節が内側に変形し外反母趾となってしまうことがあります。
また、足部には、横アーチと縦アーチ(いわゆる”土踏まず”)が存在し、歩行時の衝撃を吸収したり、推進力を生み出す力を補助するためのバネの役割をしています。縦アーチが崩れた状態である扁平足や横のアーチが崩れた開帳足では、荷重した際に母趾の付け根が内側へねじれるように力が掛かりやすいため、長い生活の中で母趾が内側へ変形することがあります。
靴は外反母趾への影響があるといわれ、幅が狭く、踵が高い靴を長期的に使用すると外反母趾になりやすいといわれています。
また、歩くときに”すり足”になる方は、足指や足底の筋肉をうまく使えないため、偏平足や外反母趾になりやすい傾向にあります。すり足になる原因には、円背(猫背)なども関係しているため、適度に運動し、全身の筋力を鍛えておくことで予防につながります。
外反母趾の原因
外反母趾は重症化すると親指の関節が半分脱臼した「亜脱臼」という状態になり、親指が回転してしまいます。この場合、放っておくとさらに変形が進行してしまうので、痛みがなくても治療を行います。
外反母趾の治療法には大きく分けて、
- 保存療法
- 手術療法
がありますが、手術は最終手段であり、普通は保存療法から行います。
保存療法
保存療法には以下のものがあります。
① 適切な靴の選択
指先がゆったりとしたサイズでヒールが低く、柔らかい素材の靴が推奨されています。またアーチを補強するような形のインソール(中敷き)を併用することも有効です。市販のインソールが合わない場合、医師の処方の下、義肢装具士がオーダーメイドで制作する場合もあります。
② 運動療法
ゴム紐を両足の母趾にかけて離す方向に力を入れるHohmann体操(ホフマン体操)が有名で、軽度から中等度の外反母趾に対して痛みを軽減する効果が期待できます。また足の指でグー・パーを作って指を開く母趾外転筋運動も軽度から中等度の外反母趾に対して効果が期待できます。
③装具療法
適切な靴の選択と運動に加えて、痛みがある場合は装具を装着します。種類はさまざまですが、主にトースプレッダーや足底板(そくていばん)を使用します。トースプレッダーは親指と人差し指の間に挟み、親指を開く目的で使用します。足底板は使用する人の足に合わせて作る、靴の中敷(インソール)タイプの装具です。親指を開くときに使う筋肉を支えることで、曲がってしまった親指をもとに戻す作用があります。
装具を使用している間は強制的に外反母趾が軽減しますが、運動療法も行い、筋力を鍛えて装具なしでも変形が進行しないようにしていきます。
④薬物療法
痛みがある場合、痛み止めの内服、軟膏や湿布を使用し、痛みを和らげながら他の保存療法と併用して行います。
手術療法
重度の変形を認め、本人や家族様が希望し、痛みのために歩行困難などの日常生活に支障が出ている症例には、足の指の骨を切り、適切な位置で固定する手術が行われます。中足骨骨切り術、Keller法などの基節骨骨切り術、関節破壊を認める症例には関節固定術や関節形成術などがあります。個々の症例に応じて手術法を選択します。
自宅でできる治療法
上述のように、治療法は様々ありますが、自宅で手軽に行え、外反母趾に効果があるのは運動療法です。外反母趾は足部にある、縦アーチと横アーチの崩れが大きな原因となっています。これを鍛え、維持することで母趾の軽度から中程度の変形の進行を予防することができます。ただし、重度の変形がある場合、運動療法を行うと痛みを伴う場合があるので、専門家に相談することをおすすめします。
①Hofumann体操
上述のHofumann体操は輪ゴムがあればできる運動です。足の親指に輪ゴムをかけて、外側に引っ張る運動を行います。輪ゴムは一つでは反発力が足りないので、数本重ねて程よい負荷にして行います。重度の外反母趾では痛みが出る可能性が高いため、行わないようにします。
②タオルギャザー
床にタオルをひき、その上に足を乗せ、足の指でタオルを手繰り寄せる運動です。足の指を積極的に屈伸させることで、足の指を鍛えます。注意点として、足首は固定し、あくまで足の指だけの屈伸を行うことを意識しましょう。
③踵上げ
立った状態で踵を上げて、足の指に体重を掛けることを繰り返します。体重が足の指に乗った際に足の指に力を入れることを意識します。転倒防止のために必ず壁を持って行ってください。足の指だけではなく、ふくらはぎの筋力強化にも効果的で歩行中の姿勢改善にも効果があります。
まとめ
外反母趾とは、母趾(足の親指)のつけ根が飛び出し、その先が小指側に曲がってしまった状態のことを言います。原因は生まれつきの足の形(遺伝)と生活習慣(特に正しくない歩き方)が組み合わさって一定の条件を満たした場合、外反母趾になることがあります。また、すり足で歩く方は足の筋肉がうまく使えないため、偏平足や外反母趾になりやすい傾向があります。
自宅でできる治療法としては、運動療法がおすすめです。運動療法を自宅で行う際は、足の指や足首を使って筋力を鍛えることが大切です。
具体的には、Hofumann体操、タオルギャザー、踵上げ運動などを行います。重度の変形がある方の場合は、そもそも足指の運動が困難で痛みがある場合が多いため、専門家に相談することをおすすめします。
参考:日本整形外科学会HP
https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/hallux_valgus.html
越谷ウェルネS整骨院・療足院の外反母趾治療は以下よりご確認できます。